Spin the Black Circle

アナログレコード鑑賞記を中心に、映画や本など興味の向くままに語る、40代オヤジの独り言

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80年代を聴く"Season 2":その7

2012.12.08

category : 80s Music

「懐かしい」という観点で音楽を振り返るのは、基本的に嫌いです。「昔は良かった」というのはどうも、現実逃避のような気がして。過去自らが慣れ親しんだものばかりをなぞっていたら、今の素晴らしいものを見落としてしまうような気もするのです。

とはいえども、久々に聴いた曲などは、やはり「懐かしいな」と感じてしまうことがあります。それは特に、音楽を能動的、積極的に聴くようになった、ミドルティーンの時に聴いた楽曲に多く感じます。わたしにとってのそれは、特に1985年、14歳の時に聴いたものがそれに該当します。

そんな1985年にチャートを席巻したアルバム、Phil Collinsの"No Jacket Required"を、80年代を聴くSeason2の最後に取り上げ、自分の中のノスタルジアについてちょっと考えてみたいと思います。

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表ジャケット。自らのアップを全面に押し出した、ある意味攻撃的なジャケットです。カメラの性能が悪いので、赤く発光する化け物のようになっちゃいました…。

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裏ジャケット。シンプルなデザインかと思いきや、バックのオレンジは皮膚のどアップなんですね。一体なにを意図してるのでしょうか?表のPhilも、よく見れば汗だくですし…。

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インナーの写真。高そうなスーツ着てますね。アルバムタイトルの"No Jacket Required"は、彼がある料理店にラフな格好で行ったら、スーツじゃないということで入店を拒否されたというエピソードを皮肉ったものだそうです。しかし、写真ではしっかりスーツを着ていて、こういったひねくれさはやはり英国人らしいなあ、って感じます。

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盤面。購入したのは英国盤。マトリックス1の初回盤です。

冒頭で「懐かしい」など書きましたが、アルバム単位では今回初めて聴くことになります。このアルバムからは4曲のシングルヒットが出ていますので、何だか全編聴いたことがあるような気もしていたのですが。

アルバム全体としては、以前取り上げたGenesisの"Invisible Touch"と比較して、どこか温かみのあるサウンドが展開されています。こちらのほうがRoland 909での打ち込みなど、人工的なサウンド率は高そうなのですが、ホーンが多用されていたりするからか(アレンジはTom Tom 84じゃないか!)、ソウル的な熱を何となく感じます。

シングルヒットした'Sussudio'は、久々に聴くとなるほど、これはPrinceのミネアポリス・サウンドを意識してるのかな、などと新たな発見があります。Stingがバックヴォーカルを務めた'Long Long Way To Go'は、シングルカットされなかったのが不思議なくらい、ヒットポテンシャルの高い楽曲ですし、'Take Me Home'のゴスペル的とも言える高揚感も素晴らしい。非常に80sっぽいメロディを持つ'I Don't Wanna Know'も、シングルカット出来るキャッチーなナンバー、本当に全体的に良くできた、心地よく聴けるポップなアルバムでした。やはりこの時期のPhil Collinsは、時代の主役だったなあと、しみじみ感じました。

このアルバムのファーストシングルとして発売され、全米1位を獲得したのは'One More Night'というバラード。まずは、この曲についての幾つかのメモを。

このムーディな曲に関わるパーソネルは、Genesisのサポートでも著名なDaryl Stuermerがギター、The Section始め名演の多いLee Sklarがベース、そして印象深いサックス・ソロを披露する、Eart Wind & Fireのホーン隊の一員だったDon Myrickという布陣。その他リズムはRoland 808での打ち込み、キーボードやコーラスはPhil自身が行っています。曲の後半から現れ盛り上げるストリングスは、重鎮アレンジャーであるArif Mardinによるもの。曲の印象としては、白人特有の甘いバラードというよりは、どちらかというと70年代前半くらいのスウィート・ソウル、または80年代のブラコンとの近さを感じる、ブラック・ミュージックへの憧れを綴っているような気がします。

歌詞はすれ違う男女を描いたもの。「僕に一晩だけ、一晩だけでもくれないか/もう一生待つ訳にはいかないんだ」と、別れの淵でかすかな望みを求める、切ない情景が描かれます。

そして、ノスタルジアについて。この曲はわたしが洋楽に興味を持ち、FMやテレビでのPVを追いかけ始め、主にキャッチーなヒット曲からそのエッセンスを吸収していた、そんな多感な時期にヒットし、頻繁にエアプレイされた楽曲です。Phil Collinsがどんなアーティストかも全く知らないし、こういった曲がどんな方向を狙った意図があるのかも全く分からず、ただそのサウンドが醸し出す雰囲気、PVのせいかセピアな侘しく感じる雰囲気に、当時惹きつけられたことを良く覚えています。そこには何というか、ただいい曲だという言うだけで済ませてはいけないような、重要な秘密が隠されているような気がしたことを、覚えています。

この当時は洋楽全盛期で、沢山の楽曲が巷に溢れていました。シリアスなアーティストなどをじっくり聴くような時期はまだ先の話で、当時は毎週のように新しく現れヒットチャートを賑わす楽曲を追いかけるだけで、必死の毎日を送っていました。そんな多くの楽曲の中でも、この'One More Night'は特別な曲として、自分の中に錨を降ろしました。

あれから四半世紀以上が経過し、わたしは本当に沢山の楽曲を聴いてきました。聴いた1曲をスーパーボールの大きさとすれば、それを累積すればきっと、琵琶湖の水面を完全に埋め尽くすくらいになるでしょう。そんな膨大な楽曲を経由した後でも、この曲を聴くと、自分という湾にこの曲がまだ、あの時と同じように錨を降ろし、停泊していることを感じてしまうのです。

今聴いても、確かにいい曲だとは思う。でも、これくらいの曲は、世の中に沢山ある。では何故、この曲は自分の中にずっと留まり続けているのか。この答えは、何度聴いても見つかりません。それ程までに、14歳という年齢が受けた刻印は、深く消えないものなのか。

14歳の時と今の自分は、随分違った人間になっていると思うのだけど、この曲を聴くと、あの時と今の自分が地続きになって繋がっていることを感じます。そして、この曲に注意深く耳を澄ませていた当時の自分に、今の自分が重なって聴いているような、そんな奇妙な感覚に陥ります。こういった風に感じられる曲は、自分の中に殆どありません。殆どの曲は、久しぶりに聴いても、今の自分の心持がどんどん曲に上書きされていきます。この曲とあと数曲、そして幾つかのアルバムだけが、過去と自分を今でも繋ぎ、時代を重ねます。

こういう、過去の自分と今の自分が繋がるような感覚は、ノスタルジアとはちょっと違うようにも思うのです。この感覚は、「懐かしい」というのとは違う気がするのです。そんな形容出来ないもどかしさに囚われながら、時々わたしはこの曲を思い出し、冬の夜道でこっそりと、ひとり口ずさんだりします。

さて、これで80sを聴くのSeason2は終わりです。80sの音は音がやかましいし、隙間のないせわしないサウンドが多いので、こうやって集中して聴くとものすごく疲れます。とは言え、新たに発見し感じる部分も多いので、また気が向いたら続きをやりたいと思います。





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80年代を聴く"Season 2":その6

2012.12.02

category : 80s Music

Princeの1987年アルバム"Sign "☮(O)" the TImes"は、当時16歳のわたしにとっては難解なアルバムでした。「大人のアルバムなのかな」というのが、当時受けた印象です。

あれから半世紀、このアルバムが40過ぎのわたしにどう響くのか。「80sを聴く」6枚目は、今ではPrinceの長いキャリア最大の傑作との評価が高い、このアルバムを聴いてみます。

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表ジャケット。当時のステージセットであった、繁華街のクラブのイメージです。アルバムタイトルの表記がありません。

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裏ジャケット。表と同様のデザインで、曲名が表記されています。

ところで、このアルバムは2枚組なのに、ジャケットは見開きでないシングルジャケットです。恐らく、CDのデザインなどに準じた結果だと考えられます。1987年はビートルズのCD化が発売された年であり、爆発的にCDの普及が進んだ年でもありました。それこそ、"sign of the times"、時代の世相を表したパッケージと言えますね。

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インナースリーブ。片面に写真(ブラックと肌色というカラーでイメージされています)、そしてもう片面に歌詞とクレジットが入っています。

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盤面。自らのレーベルである、"Paisley Park Records"の表記があります。

さて、半世紀ぶりに聴くアルバムですが、今度は一聴してハッキリ分かりました。これがとんでもない傑作ということを。

アルバムタイトル"Sign "☮(O)" the TImes"は、サウンド面でも様々な示唆をしています。'Housequake'、'It's Gonna Be a Beautiful Night'のような従来のファンク、'Play in the Sunshine'、'I Could Never Take the Place of Your Man'のようなポップナンバーが過去からの延長を表すとすれば、表題曲や'If I Was Your Girlfriend'は、これからR&BやHip Hopなどのブラック・ミュージックが辿る音楽のミニマム化、過度な装飾を避け、抑揚の少ないメロディによってクールなグルーブを目指すサウンドを奏で、1987年という時点から先に音楽がどのような道を辿るかを、自ら体現しているかのようです。というよりは、このアルバムが指し示した方向性が、この後の音楽のトレンドを導いたと言えるのかもしれません。そういった意味で、このアルバムがマイルストーンであることは、間違いありません。

そういった楽曲の中で、1曲R&Bの文脈から逸脱した、興味深いナンバーがあります。Side4の冒頭に収められた、'The Cross'というナンバーです。

ギターの弾き語りのスタイルで始まり、ドラムと共に少しずつグルーブを増してゆくこのナンバー、明らかに「ロック」を意識したナンバーでしょう。その意識した先としてわたしが想像するのは、1984年に発売されたU2のアルバム、"The Unforgettable Fire"です。例えば'Bad'のような曲を聴くと、その類似性を感じざるを得ません。Princeにとって、そうったロックサウンドは手軽に模倣出来る、安易なサウンドに聴こえたのかもしれません。それを実演してみせたのが、'The Cross'という曲ではないかと想像するのです。

そのU2とは、1988年のグラミーで"Album of the Year"を争い、モンスターアルバム"The Joshua Tree"に敗北します。その時残した有名なコメント"I can play that kind of music too...but you will not do 'Housequake'"(こういう音楽は僕にも出来るけど、君らには"Housequake"は出来ないだろ)を、実際に体現していたのが'The Cross'だったのでしょう。U2が"The Joshua Tree"によってアメリカで成功する前に、こういったサウンドを既に残していた先見性には、畏怖の念を感じます。とはいえども、'The Cross'にはその必然性というか、このサウンドでなければいけないという、逼迫したものが感じられないような気もします。

'The Cross'、そしてグラミーを巡るやりとりが、もしかしたらU2をダンス・ミュージックに駆り立てたのかもしれない、という想像も膨らみます。そして1995年のPrinceのステージにBonoが飛び入りし、この曲'The Cross'を歌という逸話が、わたしの想像にちょっと現実味を与えているような気もしますが、ホントのところは果たしてどうなのでしょうか?。

'The Cross'に話題を集中させてしまいましたが、その他の楽曲もホント素晴らしいです。'I Could Never Take the Place of Your Man'などで聴けるギターソロもカッコよく、Princeというアーティストが卓越したギタリストであることも再確認しましたし、'Adore'のようなスウィート・ソウルに敬意を表したようなバラードも感動的です。ここから先のPrinceの活動と作品に、殆ど注意を払ってこなかったことを、このアルバムを聴いて激しく後悔しています。


Prince - The Cross from Prince Funky on Vimeo.




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80年代を聴く"Season 2":その5

2012.11.23

category : 80s Music

前回のJohn Cougar Mellencampに引き続き、今回取り上げるアルバム、The Pretendersの"Get Close"も発売当時に聴いたっきりなので、聴くのが四半世紀ぶりになります。

このアルバムといえばやはり、シングルカットされヒットした'Don't Get Me Wrong'でしょうか。当時のわたしもPVでこの曲を知り、好きになった記憶があります。アルバムをレンタルで借りて聴いたのですが、結局この曲ばかりを聴いていたことを思い出します。そんな曲も今では、イントロを聴くたびに小倉さんの顔が思い出される、非常に残念な刷り込みソングになってしまいました。嗚呼…。

そんな全体の印象の全くないアルバムですが、2012年冬、一体どのように聴こえるのでしょうか?

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フロントジャケット。前3作とは異なり、Chrissie Hyndeひとりがジャケットを飾っています。前作"Learning to Crawl"もメンバーの死などでメンバーが入れ替わる、バンドとしてメンバーが固定しない時期に制作されたものでしたが、結果として固まった4人がジャケットを飾っていました。しかし、半数以上がセッション・ミュージシャンのプレイで出来上がっているこのアルバム、やはりバンドがChrissie Hyndeのユニットであるという性格が強まったことを表しているのかもしれません。とはいえ、このジャケットはカッコいいですね!

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バックカヴァー。手前からRobbie McIntosh(g)、T. M. Stevens(b)、Blair Cunningham(ds)という、アルバム制作後半でやっと固まった、バンドメンバー。このメンバーも5年と持たず、バンドを去ってしまいますが…。Robbie McIntoshはPaul McCartneyのツアーに参加しましたので、日本でもお馴染みの顔かもしれません。

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インナースリーブ。バンド写真と歌詞が掲載されています。こういう写真を掲載するということは、個人ではなく、あくまでバンドとして活動したいというChrissie Hyndeの意思があるのかもしれません。

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盤面。レーベルはジャケットと同様のデザインです。購入した盤はUK盤。この当時はよくあることですが、盤自体はドイツのプレス、刻印に"UK"の表示があり、UKで流通したものであることが分かります。

アルバムのプロデューサーはエンジニアとして名高いBob Clearmountainと、Patti Smithのプロデュースが印象深いJimmy Iovineのコンビ。Jimmy Iovineは今や、レコード会社の社長さんですけどね。

Side Oneは軽やかなギターで始まる、'My Baby'からスタート。「あなたを幸せにできるなら/本当の王女様になったように思うでしょうね/わたしとっては、それが本当の成功/ああ、わたしのベイビー」といった、かなりストレートなラブソングです。当時は再婚したSimple MindsのJim Kerrとの間に次女も生まれ、私生活での幸せぶりが恐らくこういった歌詞に反映されているのでしょう。そういった歌詞は、'When I Change My Life'、'Tradition of Love'にも通じるものです。

Side Oneの楽曲のサウンドは、いわゆる80s的な、派手なリズムにキーボードが塗り固める、個人的にそれ程興味を持てない大仰なものです。ミッドテンポの破綻のないサウンドからは、時代に寄り添ったサウンドを目指したことをが伺えます。とはいえども、Chrissie Hyndeのヴォーカルが一貫性を持たせているのか、聴き応えはしっかりある楽曲が続きます。'Dance'はSide Oneで唯一異色の、ファンク・チューン。この辺りは、T. M. Stevensのベースなどがサウンド作りに影響しているのかもしれません。Robbie McIntoshのギターも聴きどころです。

Side Oneを聴いていて思うのは、Chrissie Hyndeというアーティストにこびり付いている「姉御」的なイメージが、彼女の一面しか表していないのだろうな、ということです。これらのアルバムからは、彼女の「ひとりの女性」としての感性が浮かび上がってきます。ギターバンドとしての姿ではないサウンドを構築することで、彼女はそういった自分の別の面を、サウンドとして表したかったのかもしれません。

Side Twoはモータウンのビートを思い起こさせる、'Don't Get Me Wrong'から始まります。この曲の歌詞をザックリ要約すると、「私は色々な面があるけど、ひとつの側面で私を解釈しないでね」という感じになるのでしょうか。女性の気まぐれな側面をエクスキューズした、どことなく可愛らしさを感じる歌詞です。

アップストロークのギターがサザンソウルを想起させる'I Remember You'、Aretha Franklinのようなバラード'Chill Factor'は、非常にソウル色濃いサウンドになっています。どちらの曲も、Bernie Worrellのオルガンが素晴らしいフレーズを奏で、そのサウンドに色を添えています。'Don't Get Me Wrong'を含め、Side Twoから感じさせられるのは、ずばり「ソウル・ミュージック」です。Chrissie Hyndeとソウルというのは、全く予期していなかった組み合わせだったので、これはとても驚きでした。

'How Much Did You Get for Your Soul?"'は このアルバム2曲目のファンク・ナンバー。「あなたには一体どれくらいのソウルがあるの?/あなたが木に繋がれていた時には/あなたにはゴスペルがあった/今のあなたには自由があるけど/お金の為に歌ってるだけ」と、黒人アーティストを糾弾するかなり辛辣な歌詞になっています。具体的に誰を指しているかは分かりませんが、'Ebony and Ivory'や'We Are the World'の時代にこれを歌うのは、かなり危険なことだったかもしれません。「多くの子供たちがあなたを見てる/あなはた言う「奴らにはソーダ・ポップを飲ませてやりな」って」という歌詞を見る限り、当時ペプシと多額の契約をした、Michael Jacksonが主な糾弾先なのかもしれません。

アルバム終盤に向かうと、更に意外なナンバーが現れます。ゴスペルとも言える、宗教色のあるナンバー'Hymn to Her'は、Chrissieの学生時代の友人が書いた曲だそうです。主たるところは母と娘の愛を描いている歌詞ですが、ネットでこの曲について検索していると、この曲を"pagan"と捉えている人が多いようです。「異教」というよりは、「自然崇拝」という意味で、この曲を神への賛歌として捉えている人が多いようです。このナチュラルなバラードは、ストレートなロックバンドのイメージからは、一番遠いものかもしれません。しかしChrissieはこの後、'I'll Stand by You'というパワーバラードをヒットさせていますし、こういったメロディアスな方向性は、常に彼女の中にあるものなのかもしれません。

アルバムはJimi Hendrixをカヴァーした、'Room Full of Mirror'で幕を閉じます。この曲のみSteve Lillywhiteのプロデュース、Malcolm Foster(b)とMartin Chambers(ds)と、前作のラインナップにて演奏されています。カオスというか、どこか混沌とした演奏で、このアルバムは後味悪く幕を閉じます。

メロディの良い曲も沢山あるし、Chrissie Hyndeの個性がしっかり旨味成分として出ている、とても良質のアルバムだと思います。でも、これって、バンドのアルバムかな?という疑問が常によぎってしまいます。バンドとしてのグルーブは、このアルバムからは殆ど感じ取れません。

バンドにはこの後、Johnny MarrやAdam Seymour、Andy Rourkeなど様々なミュージシャンが加入し、脱退してゆきます。同じメンバーで何十年もやれるバンドありますが、こうやってメンバーが定着しないバンドもあります。なかなか難しいですね、バンドって。






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80年代を聴く"Season 2":その4

2012.11.17

category : 80s Music

「80年代を聴く」4枚目は、John Cougar Mellencampの"Scarecrow"を取り上げます。

このアルバムを聴くのは、発売された1985年頃以来ですから、この2012年にどのように響くのか楽しみです。

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表ジャケット。農場を仕切る囲いで佇む、寂しげな姿。後方にはトラクターと、アルバムタイトルにもなっている案山子が見えます。オープニングトラックである'Rain on the Scarecrow'を、表したものですね。赤いタイトルと囲いが、80s的ではあります。

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裏ジャケット。バンド写真、そして歌詞やクレジットが印刷されています。この時期はインナースリーブにクレジットされるアルバムが多いので、やや珍しいかもしれません。

さらに珍しいのは、曲毎に録音された時間まで書かれていることです。例えばシングルヒットした'Lonely Ol' Night'だと、"RECORDED TUES., APR. 9, 1985 @ 10:00 P.M."と記載があります。1985年の4月9日、夜10時に録音された訳ですね。このクレジットの真偽は分かりませんが、こういったクレジットをあえて記載しているのは、録音がほぼ一発撮りであることを示したかったからでしょうね。これは恐らく、装飾の多い時代のサウンドへのアンチテーゼでしょう。

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インナースリーブ。中央には"There is nothing more sad or glorious than generations changing hands. JMC 1985"というメッセージが。「世代が次に受け継がれてゆくのは、悲しく、そして栄えあることだ」という感じでしょうか。インナー下部には、1983年に亡くなった祖父にアルバムを捧げるというメッセージがあります。

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購入した盤はUS盤。レーベルはPolygram傘下のRiva、インナーグルーブには"MASTERDISK RL"の刻印があります。音の良さで定評のある、Bob Ludwigのマスタリングですね。

さて、四半世紀ぶりに聴くそのアルバムですが、最初に一通り聴いた印象は、少々悪いものでした。サウンドはいたってシンプル、ヘッドアレンジによる一発撮りであることが納得の簡素なものですが、スネアが派手に響き、どの楽器も自己主張の強い、全面に押し出されたサウンド。その非常に80sなミキシングが、単純に楽しみむことを阻害します。

しかし、何度か聴いてそのサウンドに慣れてくると、印象は随分良い方向に傾きました。シンプルなバンド編成による、粗削りで勢いのあるサウンドが心地よく響きます。このアルバムはデビューからのキャッチーなアメリカン・ロックと、近年までのルーツ色強いサウンドとの狭間にある、過渡期のアルバムとファンには捉えられているようですが、そのシリアスさと気楽さが程よくブレンドされていて、非常に聴きやすいアルバムになっています。サウンド面では特に、ギターのカッティングとドラムがカッコいい'Justice and Indepencence '85'や、シングルでもヒットしたストレートな'R.O.C.K. in the U.S.A.'が単純に楽しく聴けました。 Rickie Jee Jonesがハーモニーを付けた切ない'Between Laugh and Tear'、トワンギンなギターで押し通す'Rumbleseat'もいい感じです。このアルバムを、オルタナ・カントリーの始まりと捉える人もいるみたいですが、納得の意見ではあります。

そして、今回非常に興味をそそられたのは、歌詞の部分でした。一例として、'Rain on the Scarecrow'を訳してみましょう。

Rain On The Scarecrow

Scarecrow on a wooden cross Blackbird in the barn
十字の木の案山子、納屋のツグミ
Four hundred empty acres that used to be my farm
昔は俺の農地だった、400エーカーの空き地
I grew up like my daddy did my grandpa cleared this land
爺さんが開墾した土地で、親父と同じように俺は育った
When I was five I walked the fence while grandpa held my hand
5歳の時、爺さんは俺を抱いて、よくフェンス沿いを歩いてた

Rain on the scarecrow Blood on the plow
案山子を打つ雨、鍬に付いた血
This land fed a nation This land made me proud
この土地が国を育て、俺に誇りをくれていた
And Son I'm just sorry there's no legacy for you now
息子よすまない、もう今は遺すものが何もない
Rain on the scarecrow Blood on the plow
案山子を打つ雨、鍬に付いた血
Rain on the scarecrow Blood on the plow
案山子を打つ雨、鍬に付いた血

The crops we grew last summer weren't enough to pay the loans
夏に育てた作物では、ローンが払えない
Couldn't buy the seed to plant this spring and the Farmers Bank foreclosed
次の夏に育てる種も買えず、口座も差し押さえられた
Called my old friend Schepman up to auction off the land
古い友人のシェップマンが呼ばれ、土地が競売に掛けられた
He said John it's just my job and I hope you understand
彼は言う「ジョン、仕事なんだ。分かってくれ」
Hey calling it your job ol' hoss sure don't make it right
おい、そんな仕事を正当化するんじゃないぜ
But if you want me to I'll say a prayer for your soul tonight
でもお前が望むなら、今夜お前の魂の為に祈ってやるよ

And grandma's on the front porch swing with a Bible in her hand
ポーチに居る婆さんは、聖書を手にして揺られている
Sometimes I hear her singing "Take me to the Promised Land"
時々聴こえる婆さんの歌声、「約束の地へ連れてって」と
When you take away a man's dignity he can't work his fields and cows
男の尊厳を奪ったら、もう野に出て牛を飼うことなど出来ない

There'll be blood on the scarecrow Blood on the plow
血は案山子に落ち、鍬を濡らすだろう
Blood on the scarecrow Blood on the plow
血まみれの案山子、血まみれの鍬

Well there's ninety-seven crosses planted in the courthouse yard
裁判所の庭には、97本の十字架が立てられた
Ninety-seven families who lost ninety-seven farms
97の農場を失った、97の家族たち
I think about my grandpa and my neighbors and my name
俺は爺さん、近所の人たち、そして自分の名前について考える
And some nights I feel like dyin' Like that scarecrow in the rain
時々夜になると死んだような気になる、まるで雨の中の案山子のように

Rain on the scarecrow Blood on the plow
案山子を打つ雨、鍬に付いた血
This land fed a nation This land made me proud
この土地が国を育て、俺に誇りをくれていた
And Son I'm just sorry they're just memories for you now
息子よすまない、今お前に残せるのは、思い出しかない
Rain on the scarecrow Blood on the plow
案山子を打つ雨、鍬に付いた血
Rain on the scarecrow Blood on the plow
案山子を打つ雨、鍬に付いた血

Rain on the scarecrow Blood on the plow
案山子を打つ雨、鍬に付いた血
This land fed a nation This land made me proud
この土地が国を育て、俺に誇りをくれていた
And Son I'm just sorry they're just memories for you now
息子よすまない、今お前に残せるのは、思い出しかない
Rain on the scarecrow Blood on the plow
案山子を打つ雨、鍬に付いた血
Rain on the scarecrow Blood on the plow
案山子を打つ雨、鍬に付いた血

- John Mellencamp, George M. Green -

1980年代のアメリカは、不況に苦しめられた時代でした。ドル安にて国際競争力が低下し、国内産業が次第に衰退していった時代。そんな中、この曲では農地を手放さざるを得ない 親が、子に何も残せないことを嘆きます。こういった状況は、今の日本が抱える問題と同じで、胸につまされるものがあります。こういった国の衰退は、'The Face of the Nation'の「国の外面は/コロコロ変わる/もう判断できない」という国への不信にも表れています。

'Small Town'は小さな町で暮らす、アメリカの保守的な側面とも言える歌詞です。「俺はこの小さな町で生まれた/この町の空気を吸いながら/そしてここで死ぬだろう/間違いなく、この小さな町に埋められるだろう」こういった小さなコミュニティを愛する姿勢は、'You've Got to Stand for Somethin''(「いろんな面白い場所に行って/いろんな面白い人にも会った/でも、この中西部が俺の家だ」)でも描かれます。こういった地域に根差した姿勢は、先の大統領選を見る限り、都市部のリベラル層やマイノリティとの乖離の原因となり、アメリカ社会の分断はこの四半世紀で更に進んだように見えます。

John Cougar Mellencampはこのアルバムが発売された年に、農村救済の為のFarm Aidを開催し、この活動は今でも続いています。そして、このアルバムの後もコンスタントに作品を発表し、更にルーツ色を増したサウンドで、息の長い活動を続けています。と、書きつつも、わたしはこの"Scarecrow"しか聴いたことがないので、それがどれくらい素晴らしいのか分かりません。日本では1986年の来日が唯一だったようで、わたしのようにその活動を追っていない人も多いのでしょう。このアルバムを聴いていて、彼の四半世紀後の姿も追ってみたくなりました。






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80年代を聴く"Season 2":その3

2012.11.09

category : 80s Music

80年代は女性アーティストも多角化し、「強さ」や「たくましさ」を感じさせる時代でした。セクシャルさをより攻撃的な形で表現したMadonna、ヒッピー的自由さをカラフルなスタイルで表現したCindy Lauperなどなど。Eurythmicsのヴォーカリストとして、男性的な出で立ちで颯爽と現れたAnnie Lennoxも、そんな新しい時代のアーティストの一人でした。「80年代を聴く」3枚目は、そんなEurythmicsのセカンドアルバム"Sweet Dreams"を聴いてみます。

このアルバムが発売されたのは83年1月、わたしはまだ12歳になったばかりでした。当然ながらリアルタイムでは聴いていず、アルバムとして通して聴くのは今回が初めてになります。

さて、早速聴いてみましょう!

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表ジャケット。短髪に上半身裸、そしてボンテージ風の手袋とマスク。手にはハート型の何かと、エキセントリックな愛というイメージを感じさせられます。

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シンプルなバック。曲名とクレジットが入っていますが、筆記体なので読みづらいです。

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歌詞が記載されたインナースリーブ。映像にもこだわったユニットだけに、歌詞と対応していると思われる写真が1枚ずつ付いてます。

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レーベルはユニット名の上に、4人の人物の絵が。ちょっと謎の絵ではあります。

アルバムはメロディアスな'Love Is a Stranger'でスタート。Eurythimicsは'Sweet Dreams'の耽美的なイメージや、もう少し後のシングル、'Sexcrime'や'Would I Lie to You?'などの攻撃的なイメージが強かったので、'Love Is a Stranger'から始まるA面は非常にまっとうなポップでちょっと驚きました。

ソウルフルさと宗教的なサウンドが交差する'I've Got an Angel'、Scritti PolittiのGreenが参加しそれっぽい'Wrap It Up'(Sam & Daveのカヴァー!)、クールなビートで迫力の'I Could Give You (A Mirror)'、コーラスの掛け合いがソウルっぽい'The Walk'と、さすがに完成度が高く、聴き応えのあるナンバーが続きます。

シンセというのは耳障りで、派手さと勢いを醸し出すだけのハッタリ楽器というイメージが、80sの楽曲から刷り込まれたイメージなのですが、このアルバムを聴いているとかなり印象が変わります。シンセもセンス次第で、これだけシアトリカルな、イメージの広がるサウンドが作れるのだな、と。この印象は、'Sweet Dreams'から始まるB面で、さらに強くなります。

改めて'Sweet Dreams (Are Made of This)'を聴いてみると、一番驚くのはその歌詞のシンプルさです。

Sweet dreams are made of this
Who am I to disagre?
I travel the world and the seven seas
Everybody's looking for something

Some of them want to use you
Some of them want to get used by you
Some of them want to abuse you
Some of them want to be abused

これだけの歌詞が延々とループされ、続きます。「甘い夢はここから生まれる/相寄れない自分とは一体?/わたしは世界と七つの海を旅し/誰もが何かを探している//誰かがお前を利用したがり/誰かがお前に利用される/誰かがお前を凌辱したがり/誰かがお前に凌辱されたがっている」といった感じでしょうか。シンプルなフレーズの繰り返しが、人と人とが傷つけあう、病んだ世界のイメージを醸し出します。

次の'Jennifer'が、わたしがもっとも感銘を受けた曲です。これもすこぶるシンプルな、こんな歌詞です。

Jennifer with your orange hair
Jennifer with your green eyes
Jennifer in your dress of deepest purple
Jennifer - Where are you tonight?

Underneath the water

「オレンジの髪のジェニファー/緑の目をしたジェニファー/濃い紫のドレスを着たジェニファー/ジェニファー、今夜あなたはどこにいるの?//水の下、水の下」抑揚を抑えたメロディー、そして反復される歌詞。波の音がかぶさり、そして破綻なく曲は流れてゆきます。どう聴いても、わたしにはジェニファーが水面深くで、溺死体となって揺らめいている姿が浮かびます。後半にはパーカッシブなサウンドと、揺らめくようなギター。事件が少しずつ明るみになっているような、そんな予感を感じさせます。うむ、想像力を掻き立てられる、素晴らしい曲です。

ファンキーなエレポップ'This Is the House'、ラップ的でもあるクールなビートの'Somebody Told Me'、そして極めて映像的な'The City Never Sleeps'の静謐なサウンドで、アルバムは幕を閉じます。

あまり意味なくこのアルバムを選んだのですが、予想以上の聴き応えで、本当にビックリしました。シンセの無機質な要素を巧みに操った、80sならではの表現が味わえる、良質なアルバムでした。いやあ、80sも捨てたものではないですね!






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